「 エッセンシャル・ファシリティ 」 ▲ 論文集TOPへ

1 NTT東日本私的独占警告事件

平成12年12月、NTT東日本が、DSL(デジタル加入者線)サービスの試験提供にあたり、サービスに不可欠な加入者回線網をDSL事業に参入しようとする事業者に提供する上で、当該回線の利用に関し不当に制約を課していたことが、独占禁止法3条(私的独占)に該当するおそれがあるとして、公正取引委員会から警告を受けました。

上記事件において、加入者回線網が下記でいうところの「エッセンシャル・ファシリティ」に該当するかどうかについて直接的な言及はされていませんが、念頭に置かれていたものといえます。

注)DSLとは、既存の電話回線を使用して、高速デジタルデータ通信を行う技術で、インターネット常時接続サービスを提供することができます。

2 「エッセンシャル・ファシリティ」とは

一般に、事業活動を行うためには、その前提として、生産設備や流通ネットワークなど顧客へ商品・サービスを供給するための施設が必要となります。こうした施設のうち、それを利用できなければ事業活動が成立せず、かつ、市場内に重複的に存在させることが経済的又は技術的に不可能もしくは著しく不経済な施設を当該市場のエッセンシャル・ファシリティといいます。

具体例としては、電気通信事業における加入者回線網や電気・ガス事業における送電線網・導管網などのネットワークがあります。

上記事件でいうと、加入者回線網のほとんどはNTT地域会社が所有し、同様の回線の複製は不可能又は著しく不経済であることから、加入者回線網は、DSLサービスを含む電気通信事業分野におけるエッセンシャル・ファシリティといえます。

3 独占禁止法上の問題点

こうしたエッセンシャル・ファシリティは、これまで特定の事業者によって一元的に創設・管理することが望ましいとされ、結果的に公的事業形態や参入規制に基づく独占的事業形態で確立されてきました。

かかるエッセンシャル・ファシリティが存在する分野に他の事業者が参入するためには、巨額な投資を必要とするなど参入障壁が高いことから、既存事業者のエッセンシャル・ファシリティを借り受けざるを得ないこととなる一方、新規参入者が交渉する相手が独占的事業者である場合には交渉力の点で極めて弱い立場となります。

このように既存事業者が保有するエッセンシャル・ファシリティへの他事業者からのアクセスが認められなければ競争の導入が有効かつ適切に進まない場合に、エッセンシャル・ファシリティへのアクセスを正当な理由なく拒絶した場合には、健全な競争の確立の点から独占禁止法によりこれを規制すべきといえます。 

参考文献: 笠原慎吾「エセンシャル・ファシリティへのアクセス拒絶行為に係る独占禁止法上の考え方」公正取引第608号 


      根岸哲他「座談会 最近の独占禁止法違反事件をめぐって」公正取引第608号



 

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