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「 独禁法の事件処理手続 」
平成14年2月20日
弁護士  土田泰弘

1 独禁法に違反した場合

@ 行政処分 (排除措置命令,課徴金納付命令)
A 刑事罰
B 民事上の差止請求
C 民事上の損害賠償

2 公正取引委員会

総務大臣の所轄に属し、行政組織上、総務省の外局として位置付けられる(27条2項)
独立の行政委員会(合議制の行政機関)であるところに特色
委員長+委員4名(29条1項)
公正取引委員会の事務を処理するために、事務総局が置かれている(35条1項)。
  ※ 一般に「公取委」といえば実質的には「委員会」のことではなく,「事務総局」のことを指している場合の方が多い。
事務総局に5人以内の審判官が置かれる(35条7項)
審判官は,事務総局の職員のうち,審判手続を行うについて必要な法律及び経済に関する知識経験を有し,かつ,公正な判断をすることができると認められる者について,公取委が定める(35条8項)
事務総局の職員中には,法律専門家(検察官または弁護士の資格を有する者)を加えなければならない(35条9項)


3 独占禁止法違反事件の処理手順

事件探知

審査

@勧告
→応諾→勧告審決(→課徴金納付命令)
→不応諾→審判開始決定→審判審判→審決(→訴訟)(→課徴金納付命令)
A警告・注意等
B告発
Cまったく取り上げない(打ち切り)


4 事件審査の開始に至るまでの手続


(1) 事件の端緒

@ 一般からの申告(45条1項)
A 公正取引委員会の職権探知(45条4項)
B 検事総長からの調査請求(74条)
C 中小企業庁長官からの調査請求 など

@が事件端緒の大部分を占める。
通常は,不利益を受けている立場にある会社等が公取委に申告。
独禁法違反行為をしている業界の内部告発としての申告もある。

(2) 立件手続
事務総局審査局長は,審査の要否につき意見を付して委員会に報告しなければなららない(規則9条1項)。
委員会により法46条1項の権限を行使して審査を行うか否かが決定され,委員会により指定された審査官が審査に当たる(規則9条3項)。

46条1項(立件審査)〜調査のための強制処分
@ 出頭命令
A 鑑定命令
B 提出命令
C 立入検査
この46条1項の権限を行使して行う審査を「立件審査」と呼ぶ。


5 立件審査の手続


(1) 立入検査
(2) 証拠整理
(3) 事情聴取
(4) 報告書作成
(5) 委員会審議

審議の結果,当該事件をどのように措置するかが決定される。

@ 勧告
違反行為が認められるときに行為者に対し,当該行為を排除するなどのために適当な措置をとるべきことを勧告するもの(48条1項)
勧告に応諾したときは,審判手続を経ないで当該勧告と同趣旨の審決が行われる(48条4項)。
勧告に応諾しなかった場合は,審判手続に移行する。
法律上は,勧告をせずにいきなり審判開始決定をすることも可能である(49条1項)。しかし,実際の運用では,まずは勧告を行うのが通例である。

A 警告
違反行為を完全に認めるところまで至らないがその疑いが強く認められる場合に行政指導により一定の措置をとるよう違反被疑行為者に促すもので,文書によって,理由を示して行われる。原則として公表されている。

B 注意
現状では違反とはいえないが,状況の如何によっては違反となりうるというような場合に法の趣旨等を説明して注意を喚起するもの。

C 打切り
証拠不十分でさらに審査しても打開のめどがない場合または違反行為がないことが明らかな場合に行われる。

※ 一般常識においては,「勧告」よりも「警告」や「注意」のほうが厳しいという印象を受けるが,独禁法においては,勧告は法定の処置であり,警告や注意は非公式の処置であるから,一般常識とは逆になっている。


6 審判手続


・ 審決という行政処分のための事前手続
・ 準司法手続,
・ 委員会審判と審判官審判

(1) 審判開始決定
(2) 答弁書の提出
(3) 冒頭手続
(4) 証拠調べ(参考人の審尋,書証,検証,鑑定)
(5) 最終意見陳述
(6) 結審
(7) 審決案の作成
審判官が作成。委員会に提出し,かつ,審決案の謄本を被審人(又は代理人)に送達。
被審人(又は代理人)は審決案の送達を受けた日から2週間以内に委員会に対して異議の申立をすることができる(規則68条1項)
(8) 審判
@委員会が審決案を適当と認めたとき→審決案どおりの審決(規則69条1項)
A異議の申立等に理由があるとき,又は必要があるとき
審決案の内容と異なる審決をするか,又は自ら審判を開き,若しくは審判官に審判の再開を命ずる(規則69条2項)
※ 同意審決
審判の途中で被審人が審判開始決定書記載の事実及び法律の適用を認めて,その後の審判手続を経ないで審決を受ける旨を申し出た場合に行われる(法53条の3)


7 審決取消訴訟


・ 一般の行政処分の取消訴訟のそれと異ならないが,準司法機関の性質を有する公取委→特則
・ 第1審の裁判権〜東京高裁(85条1項)
 → 公取委の地位を,通常訴訟の第1審裁判所である地方裁判所に準じて扱う意味

(1) 訴訟の対象
理論的には勧告審決と同意審決も対象となる。しかし,同意した人は争わない。
(2) 原告適格
「取消しを求めるにつき法律上の利益を有するもの」(行政事件訴訟法9条)
(3) 出訴訟期間
審決が効力を生じた日から30日,ただし,例外あり(法77条)
(4) 事実認定の裁判所に対する拘束(実質的証拠の原則,法80条)
(5) 新証拠の提出(81条1項)
(6) 審決の取消(82条)
@審決の基礎となった事実を立証する実質的な証拠がない場合
A審決が憲法その他の法令に違反する場合

※審決取消しのための差戻し(83条)


8 課徴金納付命令

1977年の法改正で創設
カルテル「やり得」を許さない
課徴金は刑罰ではなく,行政上の措置→公取委に裁量の余地はない(7条の2第1項)。

(1) 対象となる事件
いわゆるカルテルのうち,商品役務の対価に影響するもの(7条の2第1項)
(2) 課徴金の計算方法
多くの場合は売上額の6%(7条の2第1項)
(3) 課徴金納付命令等の手続
事前通知の制度(48条の2第4項)
課徴金納付命令は,書面で行う(48条の2第2項)

当該違反行為について審判手続が開始された場合には,審判手続が終了した後でなければ,課徴金納付を命令することはできない(48条の2第T項但書)
課徴金審判が開始された場合,課徴金納付命令は失効する(49条3項)
課徴金審判の結果,課徴金納付の要件が存在することが認められれば,審決をもって課徴金の納付が命じられる(54条の2第1項)

〜 民事訴訟 〜
@ 損害賠償請求,差止請求
A 相手方が契約を根拠に訴えてきたときに,「その契約条項は独禁法違反であって無効である」という抗弁を提出する
B 株主代表訴訟
C 不当利得返還請求訴訟
D 特許権侵害訴訟における濫用の抗弁
E 談合についての住民訴訟 など


9 損害賠償請求

(1) 独禁法25条
無過失責任(25条2項)
公取委審決の確定が訴訟要件(26条)
東京高裁が第1審(85条2号)
(2) 課民法709条等
公取委審決が確定している場合にも,民法709条等を使ってもよい
民訴4条・5条が定める管轄がある限り,全国どの地方裁判所にでも提起することができる。差止請求と併合する場合には,民訴法の原則に加え,東京地裁等でも提起することができる。


10 差止請求(24条)

簡単にいえば,公取委による排除措置命令と同じような命令を裁判所が出すよう,民事訴訟において請求すること。平成12年改正により,不公正な取引方法に対する差止請求が可能であることを明らかにする独禁法24条が新設された。

対象となる違反類型
…不公正な取引方法と,事業者団体が事業者に不公正な取引方法をおこなわせる8条1項5号違反行為

請求権者
「著しい侵害」という絞り

管轄裁判所(84条の2)
@民訴4・5条
Aその地裁の区域を管轄する高裁の所在地の地裁
B東京地裁
   ↓
訴訟が高裁所在地の地裁に集中するよう誘導し,さらには東京地裁に集中するよう誘導する規定。
民法709条等による損害賠償請求と併合して請求される場合は,84条の2第2項により,損害賠償請求も上記AやBに併せて提起できる。

公取委からの意見提出 83の3

11 刑事告発

不公正な取引方法には、確定審決違反の場合を除き罰則なし。
主要なもの(89〜91条)は,公取委のみ告発できる(96条)。
その場合の第1審の裁判権は東京高裁(85条3号)
両罰規定(95条)




 

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