Virtual v. Prime F.3d 660 (6th Cir.1993)
<事案>
Primeは、Fordの下請会社用のPDGSというCAD/CAMソフトを製造、販売していた。PDGSは、Primeが製造するPrime
50シリーズというミニコンピュータ上でのみ動作するものであった。Fordは、デザインサービスを行う全ての下請会社に対し、最新のPDGSを使用することを要求していた。Primeは、PDGSのサポートや更新サービスも提供しており、ハードウェア(Prime
50シリーズ)の保守サービスも提供していた。Primeは、ハードウェアの保守サービス契約を締結していない顧客に対してもソフトウェアのサポートを提供していたが、その価格は、ハードウェアの保守サービス契約を締結している顧客より900%高いものであった。
Virtualは、ハードウェアの保守サービス業者であり、Prime 50シリーズの保守サービスも提供しようと試みたが、顧客は、Virtualにハードウェアの保守サービスを依頼するとPrimeに対して高額なソフトウェアのサポート料を支払わなければならなくなるため拒絶された。そこで、Virtualは、Primeは、Ford用のCAD/CAMソフトのサポート(tying
product)をハードウェア(Prime 50シリーズ)の保守サービス(tied product)に抱き合わせているとして提訴した。 |
<争点>
Primeは、tying product市場において十分な経済力(appreciable economic
power)を有しているか?そもそも、「PDGS(あるいはFord用のCAD/CAMソフト)のサポート」という市場が成立しているのか?
[Primeの主張]
| 「Ford用のCAD/CAMソフト」という市場画定は、狭すぎる。「全てのCAD/CAMソフト」を1つの市場と考えるべき。そうすれば、Primeは、この市場において十分な経済力を有していない。 |
[裁判所の判断]
顧客は、一旦、Fordの下請となって、Prime50シリーズの使用を開始すれば、PDGS以外のソフトを使用することが事実上不可能であり、ロックイン現象が生じている。ハイテク製品を購入する際には、全ての情報が提供されているとは限らず、顧客が、その製品のライフサイクル期間に必要となる総費用を理解して購入しているとは限らない。また、他社に製品に移る乗り換え費用(switching
cost)は、ハイテク製品の場合は、高額になりがちである。したがって、本件でも、「Ford用のCAD/CAMソフト」という市場を1つの市場と考えることができる。
Primeは、「Ford用のCAD/CAMソフト」のサポートという市場における支配力を利用して、「Prime
50シリーズの保守」という顧客が望まない商品を販売しており、抱き合わせの典型的な事案である。 |
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<検討>
1つのブランドの製品やサービスが1つの市場となりうるかについては、今までも議論があり、これを否定する傾向が強かった。しかし、Eastman
Kodak事件以降、これを肯定する例も見られる。同事件では、「Eastman Kodak社のコピー機用の部品」を1つの市場と見ており、本件でも、「Ford用のCAD/CAMソフト」を1つの市場と見ている。本来であれば、他社のコピー機を購入してその部品も購入できるので、「コピー機用の部品」を1つの市場と考えるべきであるようにも思えるが、一旦コピー機を購入すれば、部品代が高いからといって他のコピー機に乗り換えることは少ない。これがロックインである。
本件は、Fordの下請業者が自ら最初にPrime 50シリーズを選択したのではなく、Fordが選択し、これを強制されているという点で、若干異なるが、ロックインされている点に変わりはない。
以上の通り、「ロックイン現象」という考え方は、1つのブランドの製品やサービスを1つの市場と考える際にも用いられるものであると考えられる。 |
SMS Systems Maintenance Services, Inc. v. Digital Equipment
Corp. C.A.1 (Mass.), 1999.
<事案>
| 被告Digital Equipment Corp.(DEC)は、コンピュータのメーカーであり、原告SMSは、DEC社のコンピュータの保守および補修を業としていた。DECは、1994年、中規模のサーバー製品について、他社との差別化を図るため、3年間の保証をつけて販売するようになった。SMSは、このDECの行為が、独占力の不当な行使としてシャーマン法2条に該当するとして訴訟を提起した。 |
<争点>
| 1. |
DEC社の中規模サーバー製品のアフターサービスは、DEC社の中規模サーバー製品の販売とは別個の市場か?
[DECの主張]
| コンピュータの販売に付随するものであり、別個の市場を構成しない。 |
[裁判所の判断]
| 中規模のサーバーは、アフターサービスを付けずに販売されたり、他のパッケージが付随されたりしており、アフターサービスは、別個の市場を構成すると考えられる。 |
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| 2. |
DECは、DEC社の中規模サーバー製品のアフターサービス市場で独占力(market power)を行使して、不当な排除的行為(improper
exclusionary conduct)を行ったか?
[SMSの主張]
| Kodak事件と同様、DEC社の中規模サーバー製品の顧客は、ロックインされており、サーバーを買い換えるときもDEC社の製品を買うことになり、DEC社にアフターサービス(3年間の保証)を求めるかどうかの選択の余地を奪われている。 |
[裁判所の判断]
Kodak事件とは異なる。例えば、乗り換え費用(switching cost)についても、Kodak事件では、部品が供給されなかったため、消費者は、別のメーカーのコピー機を購入せざるを得なくなった。しかし、本件では、そのような多額の乗り換え費用ではない。消費者(DEC社製品の利用者)は、継続してSMSの保守・修理サービスを頼むこともできるのである。その場合、DEC社製品を購入した際に上乗せして支払っていると考えられるDEC社に対する保守・修理代が無駄となるが、これは僅かである。
したがって、DEC社の行為は、シャーマン法2条に該当しない。 |
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<検討>
DECが3年間の保証をつけて販売することにより、SMSが大きな打撃を受けることは事実であろう。しかし、DECは、SMSを排除する意図ではなく、他のサーバーメーカーとの競争のために打ち出した措置であること、当時は、中規模サーバー製品の保証を行うことは珍しかったとはいえ、パソコンでは保証も行われていたことなどを考えれば、DECの行為がシャーマン法2条に該当するとは言えないであろう。
ロックインについても、サーバーは、パソコンとはことなり、作業員等の教育も必要であり、使い慣れたものを使うという傾向はあるが、それだけでロックインされているとまでは言えないという判断である。 |
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