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資生堂販売事件(河内屋事件)

東京地裁平成12年6月30日判決(百選[第6版]127事件)
2003年4月23日
弁護士 土谷 喜輝

<当事者>
原告 株式会社河内屋
化粧品の販売等を目的とする株式会社
被告 資生堂販売株式会社
資生堂の製造する化粧品・食品の卸売販売等を目的とする株式会社


<事案>
原告(当初は個人)は、昭和38年から資生堂化粧品等の販売特約店として、被告と取引。
被告の特約店契約には、対面販売が義務づけられているチェインストア契約と対面販売義務のないコスメニティー契約の2種類。
上記契約には、解約に関し以下のような条項が含めていた
「契約の有効期間は締結日から1年間とし、当事者双方に異議のない場合には更に1年間自動的に更新され、以後も同様とする。」
「当事者双方は、右期間中でも、文書による30日前の予告をもって契約を中途解約することができる。」
原告は、平成5年6月9日以降、資生堂化粧品の安売りを開始。
被告は、平成5年7月20日、原告とのチェインストア契約とコスメニティー契約を解約、出荷停止。
原告が出荷を求めて提訴。


<争点>
被告の解約は有効か?


<判決>
[結論]
被告の解約を有効と判断して、原告の請求を棄却。
[理由]
契約自由の原則から、理由なく解約できるとする条項も信義則違反、権利濫用、または公序良俗違反に該当しない限り有効。
しかし、
原告と被告は長期間継続的に契約しており、解約により原告が多額の損失を被ることを信義則の判断で考慮すべき。
以下の3つの独禁法違反の論点を検討。
@ チェインストア契約上の対面販売義務と卸売禁止が一般指定13項(拘束条件付取引)に該当しないか。
→ 平成10年資生堂・花王最高裁判決の基準を用い、化粧品という商品の特性からブランドイメージの維持・高揚が必要であるとして、対面販売義務と卸売禁止は、相手方の事業活動を『不当に』拘束するとは言えない。
A チェインストア契約上の対面販売義務と卸売禁止が一般指定12項(再販売価格維持)に該当しないか。
→ 販売方法の限定により販売経費が増加し、多少、小売価格が安定する効果が生じるが、再販価格を拘束している証拠はない。
B コスメニティー契約上の卸売禁止が一般指定13項(拘束条件付取引)に該当しないか。
→ 卸売販売の禁止は、対面説明販売の実効性を確保するための方法であり、「相手方の事業活動を『不当に』拘束する条件を付けた取引に当たるといわざるを得ない。」
上記を前提に本件解約の有効性を検討。
・ 原告がチェインストア契約上の対面販売義務と卸売禁止に違反していることを認定。
      ← 原告は、被告の真の目的が再販価格維持であると主張。
(公取委平成7年6月21日勧告)
割引販売を企図した大手量販店に対し、資生堂化粧品のうち非再販商品について、メーカー希望小売価格を下回る価格で販売しないよう要請し、メーカー希望小売価格で販売するようにさせている行為を取りやめ、今後も販売価格を制限しないこと。
実質的に消費生活協同組合との間で締結している再販売価格維持契約を破棄し、今後も締結しないこと。
裁判所は、「平成5年当時、資生堂が資生堂化粧品が割引販売されることについて相当の危機感を抱いていたものと推認され」るが、「右の契約違反という理由が再販売価格維持の目的を隠ぺいするための単なる口実であり、本件各特約店契約を解約した真の目的は再販売価格の維持にあるとまで認めることはできない」と判示。
また、「チェインストア契約とコスメニティー契約は、別個であり、解約の正当性も個別に判断すべき」としながら、「元々、コスメニティー契約の対象となっている化粧品は、チェインストア契約の対象とされていたものであり、チェインストア契約に関する信頼関係の破綻は、コスメニティー契約における信頼関係にも大きく影響する」と判断して、コスメニティー契約の解約についても、信義則違反等はないと判示。


<田村教授の解説>
ロック・イン
特約店が開拓した顧客が他メーカーの化粧品を使用することはない等の理由により、特約店にとって当該メーカー以外の者との取引に転換することが困難である場合(ロック・イン)には、市場による選択が働かないので、より厳しい厳格な基準をもって対面販売の当否を吟味し、合理性のない制約に違反したことを理由とする契約の解消は許すべきではない。
非特約店に対する参入障壁
顧客の少なからざる数の者が他の化粧品では代替可能性を認めないとすれば、卸売禁止条項は、当該市場に対する非特約店の参入を困難とし、競争減殺効果を有する。そこまでブランドとして確立していなくとも、市場において有力な地位を占めていたり、代替可能性のあるクラスの化粧品一般について各社が同様の特約店のシステムを採用しているとすれば(並列実施の問題)、卸売禁止条項により非特約店の参入が困難となることに変わりはない。そのような競争減殺効果を甘受してまでなおその実効性を確保しなければならない販売方法の制約には、高い合理性が必要。

以 上



 

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