| 1. |
差別対価とは |
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| (1) |
不当に,地域又は相手方により差別的な対価をもって,商品若しくは役務を供給 し,又はこれらの供給を受けること」(一般指定3号)
「正当な理由がないのに,地域又は相手方により差別的な対価をもって,物資,資金その他の経済上の利益を供給し,又は供給を受けること」(旧一般指定4号)
旧指定では,「正当な理由がないのに」とされていたのに対して,新指定では「不当に」とされている。これは,旧指定においては,「正当な理由がないのに」「不当に」という文言に特段の意味はなく使われていたが,新指定においては,「正当な理由がないのに」という文言の類型は原則公正競争阻害性が認められるのに対して,「不当に」という文言の類型は原則違法とは言えず公正競争阻害性を個別に判断する必要があると有意的に使い分けられていることによるものであって,昭和57年改正前後において,一般指定の内容には変わりはないとされている。 |
| (2) |
差別対価は,独禁法2条9項1号の不当な差別的取扱いに対応する。また,差別を 受ける側が事業者ではなく消費者である場合1号には該当しないことから,当然に法2 条9項2号の不当対価にも対応する。さらには,買い手の側が不当に低価格で購入する 場合は,法2条9項5号にも対応すると考えられる。 |
| (3) |
特殊指定
新聞業,百貨店業,海運業については,特殊指定がある。
新聞業に関する特殊指定においては,「不当に」という文言を欠いていることに注意を要する。 |
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| 2. |
「不当に」の意味 |
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事業者がどのように対価を決定するかは本来自由であり,事業者が自由に対価を決められることが,価格競争の前提である。しかし,「不当に」すなわち公正競争を阻害するような形で差別をした場合には,不公正な取引方法にあたる。
ここでいう「不当に」というのは,「公正競争阻害性」を意味するとされている。そして,「不当に」差別したかどうは,具体的な場合に応じて個別に判断されることになる。 |
| 3. |
公正競争阻害性 |
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| (1) |
昭和57年に発表された独占禁止法研究会報告「不公正な取引方法に関する基本的な 考え方」(公正取引382号34頁)によれば,「公正な競争」とは,第1に,事業者相互 間の自由な競争が妨げられていないこと(自由な競争の確保),第2に,自由な競争が 価格・品質・サービスを中心としたもの(能率競争)であることにより,自由な競争が 秩序づけられていること(競争手段の公正さの確保),第3に,取引主体が取引の諾否 及び取引条件について自由かつ自主的に判断することによって取引が行われているとい う,自由な競争の基盤が保持されていること(自由競争基盤の確保)とされている。
なお,これに対して公正な競争とは,価格・品質・サービスを唯一の手段とする競争あるいはかかる競争が行われている状態と理解すべきであり,そうすると,第2,第3は,「公正な競争」の概念の内容というよりも,公正な競争を成り立たしめる前提条件ということができるという批判がある(「新・不公正な取引方法」根岸哲ほか共著21頁)。 |
| (2) |
いずれにしても,公正競争阻害性はかかる公正な競争を害することである。
すなわち,@自由な競争の確保,A競争手段の公正さ,B自由競争基盤の確保の3つの条件が保たれていることをもって公正な競争秩序と観念し,このような競争秩序に対し悪影響を及ぼすおそれがることをもって公正競争阻害性とみることができる。独占禁止法第2条9項各号に列挙されている行為類型は,これら3つの条件のいずれか又はいくつかを同時に侵害するものである。
より具体的には,@事業者間の自由な競争,事業者が市場に参入することが阻害されていないこと。A自由かつ自主的な事業活動を制限・抑圧すること。B市場価格の成立又はその機能を制限ないし歪曲する競争方法及び取引方法。C市場支配力,あるいは大きな経済力を有する事業者の行う行為であって,市場に有効な競争が存在する場合には行いえないものであり,消費者の利益又は国民経済の民主的かつ健全な発展を阻害する行為。こういったことが公正競争阻害性を有するといえる(「新・不公正な取引方法」根岸哲ほか共著22頁〜23頁)。 |
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| 4. |
差別対価における公正競争阻害性 |
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| (1) |
経済活動において,取引数量の多寡,決済条件,配送条件等の相違を反映して取引 価格に差が設けられることは,広く一般にみられることである。また,地域による需給 関係の相違を反映して取引価格に差異が設けられることも通常である。
かかる観点からすれば,取引価格や取引条件に差異が設けられても,それが取引数量の相違等正当なコスト差に基づくものである場合や,商品の需給関係を反映したものである場合等においては,本質的に公正な競争を阻害するおそれがあるとはいえないものと考えられる。
しかし,例えば,有力な事業者が,競争者を排除するため,当該競争者と競合する販売地域又は顧客に限って廉売を行う場合は,独占禁止法上問題となる。
また,有力な事業者が同一の商品について,取引価格やその他の取引条件等について,合理的な理由なく差別的な取扱いをし,差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合にも,独占禁止法上問題となる(以上につき,「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価への対応について」平成13年12月14日公正取引委員会ガイドライン)。
すなわち,差別対価の公正競争阻害性は,@行為者の競争者を排除する点,A取引の相手方を競争上著しく不利な地位に陥れる点,B独禁法上違法又は不当な目的を実現する手段として用いられる点に求められる。
そして,かかる公正競争阻害性の有無について,具体的な場合に応じて個別に判断されることになる。 |
| (2) |
公正競争阻害性の判断基準
では,かかる差別対価の公正競争阻害性の有無の判断の基準としては,どのように考えられるか。
この点は,行為の意図,目的,取引価格・取引条件の格差の程度,行為者及び競争事業者の市場における地位,取引の相手方の状況,取引形態等を総合的に勘案し,市場における競争秩序に与える影響を考慮して,判断されることになる(前出平成13年12月14日ガイドライン)。
例えば,同一商圏において,取引高,決済条件,配送条件等が同じ若しくは同等であるにもかかわらず,実質的な販売価格(リベート等も考慮に入れる)が著しく異なる場合は,差別対価の疑いが強いといえる。このような場合,公正取引委員会としては調査を開始するとされている。 |
| (3) |
東洋リノリューム事件
東洋リノリューム事件においては,取引価格の格差の程度が1枚につき5円と末端価格において極めて大きな割合を占めていること,A,Bの市場における地位はシェアが65%であり極めて有力な事業者といえる。したがって,取引の相手方を競争上著しく不利な地位に陥れる点は明らかと判断された。
また,本件は,A,B,C,Dの4社のカルテルの一環として(販売価格を維持するために工事店のビニ協への加入を促進させる目的),差別対価が行われており独禁法上違法又は不当な目的を実現する手段として用いられる点にも公正競争阻害性を求めることができる。 |
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